「柔らかい」と「軟らかい」は「力を加えた後、元に戻るか戻らないか」で使い分けされています。ただし基本的な意味に違いはなく、厳密な使い分けが難しい言葉でもあります。
昭和48年改訂前の当用漢字音訓表には、「柔」のみ「やわらかい」という訓読みが採用されていました。そのため、迷った時は広く一般的に使われている「柔らかい」を使えば間違いありません。
力を加えた後の状態 | 意味の違い | |
柔らかい |
形が元に戻るものに対して使われる (身体・布団・クッションなど) |
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軟らかい |
形が元に戻らないものに対して使われる (ご飯・土壌・肉・金属など) |
ぐにゃりとして、手ごたえがない |
当用漢字音訓表 | 昭和48年改訂前 | 昭和48年改定後 |
「柔」の訓読み | 「やわらかい」採用 | 「やわらかい」採用 |
「軟」の訓読み | 「やわらかい」採用されず | 「やわらかい」採用 |
より詳しい説明を知りたい方は、この記事の下で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
以前は「軟」に訓読み「やわらかい」は採用されていなかった!!
現在も使用されている「常用漢字表」は「当用漢字表」が廃止され移行したものですが、漢字制限色が強かった昭和23年の「当用漢字音訓表」には「軟」の漢字には「ナン」という音読みしかありませんでした。
「軟」に訓読み「やわらかい」が加わったのが、大幅に訓読みが増やされた25年後の昭和48年に改定された音訓表からです。
そのため、迷った時は広く一般的に使われている「柔らかい」を使えば間違いありません。
柔らかいと軟らかいの違いとは?
読み方
柔らかい・・やわらかい
軟らかい・・やわらかい
使い分け
力を加えた後の状態 | |
柔らかい |
形が元に戻るものに対して使われる
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軟らかい |
形が元に戻らないものに対して使われる
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意味の違い
意味の違い | |
柔らかい |
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軟らかい |
ぐにゃりとして、手ごたえがない |
「柔」と「軟」の漢字の字源
「柔」も「軟」も形声文字で、音を表す文字(音符)と、意味を表す部分(意符)で構成されています。
「柔」の漢字の字源
「柔」は音符「矛」(ジウ)と、意符「木」で構成されています。
加工が簡単なやわらかい木の意味を表しています。そこから「やわらかい」という意味で用いられるようになりました
「軟」の漢字の字源
「軟」は「輭の略字」です。「輭」は音符「耎」(ゼン)と、意符「車」で構成されています。
車輪に蒲(がま)の穂をまいて反動をやわらかくした車の意味を表しています。そこから「やわらかい」という意味で用いられるようになりました。
「輭」の成り立ちは?
「輭」は「車」の象形、「ひげ」の象形(意味:やわらかい)、「両手両足を伸びやかにした人」の象形(意味:弱々しい人)から成り立ち、やわらかな車を意味します。
【参考文献】
- 新漢語林 大修館書店
- 角川新字源 改定新版 角川書店
蒲(がま)の穂とは?
蒲(がま)の穂とは、蒲(がま)の花のことを指し、6月から8月にきりたんぽやソーセージに似た円柱形で茶色の花を咲かせます。
柔らかいと軟らかいの英語表現
「柔らかい」と「軟らかい」の英語表現は、どちらも「soft」になります。
英語表現 | |
柔らかい | soft( ソフト) |
軟らかい |
サマリー
- 「柔らかい」と「軟らかい」は「力を加えた後、元に戻るか戻らないか」で使い分けされている。
- 昭和48年改訂前の当用漢字音訓表には、「柔」のみ「やわらかい」という訓読みが採用されていた。そのため、迷った時は広く一般的に使われている「柔らかい」を使えば間違いない!
力を加えた後の状態 意味の違い 柔らかい 形が元に戻るものに対して使われる
(身体・布団・クッションなど)
- ふっくらしている
軟らかい 形が元に戻らないものに対して使われる
(ご飯・土壌・肉・金属など)
ぐにゃりとして、手ごたえがない