心の探究

乗り遅れた朝に、全ては動き出した

 

 

都会が苦手な私は、両親と1日、ブリスベン近くの島へ行くことにした。

そして、フェリー乗り場行きのバスに、乗り遅れた。

前の晩、乗り換え時間まで調べて、完璧な予定を立てていた。

これなら大丈夫。

迷わない。

そう思っていたのに、駅でトイレに行ったほんの数分の間に、
バスは行ってしまった。

気づいたとき、駅に残されていたのは、私と両親だけ。

せっかく早起きしたのに。

私のせいで。

胸がざわざわした。

次のバスを待つ気になれず、歩くことにした。

バスで行くはずだった2.2km。

何も言葉が出ないまま、ただ歩いた。

でも両親は、

「こんなこともあるよ」

「歩くのも楽しいね」

と、笑ってくれた。

フェリー乗り場に着くと、フェリーはちょうど出たばかりで、次まで1時間近くあった。

お客さんのいない静かなカフェで、海を眺めながらカフェラテを飲む。

少しずつ、胸のざわざわが静かになっていった。

そしてこのあと、思いもしなかった景色を見ることになる。

 

 

フェリーに乗るころには、ざわざわは少しずつワクワクに変わっていた。

そして、島でいちばんの絶景ポイントに着いた瞬間。

目の前の青い海に、イルカの群れが見えた。

思わず、「えっ!」と声が出た。

さっきまで、

「最悪だ」

「失敗した」

と思っていたのに。

その景色を見た瞬間、
もしかしたら、乗り遅れてよかったのかもしれない。

そんなふうに思えた。

でも、そのあと。

さらに信じられないことが起きた。

 

 

遊歩道を歩いていると、すれ違った女性が、

「この先に、カンガルーがいるよ」

と、声をかけてくれた。

そして、わざわざ私たちを、野生のカンガルーがいる場所まで案内してくれた。

木陰の中にいた、3匹のカンガルー。

教えてもらえなかったら、きっと気づかず通り過ぎていた。

草木にまぎれて見つけにくかったけれど、うれしくて必死で写真を撮った。

しばらくすると、カンガルーが動き始めた。

なんと、私たちの手が届きそうな場所まで近づいてきた。

野生のカンガルーを見たのは、はじめてだった。

でも、不思議とまったく怖くなかった。

それくらい、静かにそこにいてくれた。

最後には、華麗なジャンプを見せながら去っていった。

慌てず、動画まで撮れてしまった。

「あぁ、なんてラッキーな一日なんだろう」

朝、駅に取り残されたときには、こんな日になるなんて思ってもみなかった。

あのときは、失敗だと思った。

でも、本当に失敗だったかは、終わるまでわからない。

 🌻脳内ルール
失敗してしまった

終わるまで、失敗だったかはわからない

初出 : X @hanahanahealing